社会保障

「年金制度の運用」ってどうなの?FPが詳しく解説

老後の生活は何となく不安。最近、テレビで年金2000万円問題で話題にもなったし……
日本の方の老後に対してのイメージは非常に重い物になっています。
自助努力の重要性が昨今叫ばれていますが、国の助けがなければ生活ができない所得層のほうが多いのが事実ではないでしょうか。
そのため、国がどのような動きでお金について考えているかを知ることは非常に大切。
今回は皆さんに老後の生活の重要要素「年金」についてお話していきたいと思います。
その上で、皆さんが学ぶべき点と生かすべき点についてFP視点でお伝えしていきます。

年金の仕組み

そもそもの皆さんの年金の仕組みはどのようになっているのでしょうか。
年金と一口に言っても実は様々な役割があります。
例えば一家の稼ぎ手がなくなってしまったときに給付のある遺族年金。
障害状態になってしまった際に給付の受けられる障害年金。
そして皆さんに一番なじみの深い老後に受け取ることができる老齢年金です。
今回は特に老齢年金の部分をピックアップしながら記載をしていきます。

・老齢年金の特徴
老齢年金(以下年金)の特徴を大きく分けるとこのような仕組みになっています。
・国民年金と厚生年金の2階建ての仕組み
・世代間扶養
・積立金運用

2階建ての仕組み

まず国民年金といわれる20歳以上の国民が納めなければならない1階部分があります。
令和2年度は16540円/月の支払いとなっています。
国民年金を満額収めた場合に受け取れる金額は78万円1,692円となっており、ここから所得税等の課税がなされる形となっています。
金額は毎年変更があり一律ではありません。

この国民年金部分に追加して厚生年金部分が給付されます。
厚生年金は会社員と会社との折半で保険料が納められています。
受取金額の目安としては人生全体の平均年収×0.22で勤続40年分の厚生年金の給付金額の目安が求められます。
ただし、年収により納められる厚生年金額に上限がありますので、年収1,000万円を超えた段階から1,000万円の年収と見なして、平均額を
求めるとリアルな厚生年金の給付額に試算近づけることができます。

世代間扶養

年金制度は今の高齢者の年金を現役世代の保険料で賄っている制度です。
不足分に関しては国庫からの財源と年金積立金から給付される形になっています。
世代間扶養が導入された背景としてはインフレに備えるためです。
インフレとは物価上昇のことですが、基本的に資本主義で経済成長をする国はインフレを余儀なくされます。
日本でも缶ジュースの値段や、駄菓子の値段等が少しずつ上がっているのを感じますよね。
今の100円の価値と将来の100円の価値が同じとは限りません。仮にインフレが2%で30年続いた場合には、今の100円の価値と将来の180円の価値がほぼ同じになってしまいます。
世代間で保険料を受け取りあう形にすることでインフレの影響を抑えることができます。

しかしデメリットとして少子高齢化のような状態になると、保険料納付の世代と受け取りの世代で人数にひずみが生じます。
そのため、保険料納付者の負担が重くなってしまうデメリットがあります。
その負担を和らげる制度として積立金運用という制度が作られています。

積立金運用

年金は保険料の使われなかった部分を積立金として将来の年金原資として先送りをしています。
先送りされた現金に関してはインフレリスクをヘッジするために株式や債券等での運用を行います。
運用はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)にて運用をされています。
日経新聞やテレビ等で運用成果について取りざたされることも近年増えてきています。
積立金運用の金額は2020年6月末で164兆2453億円となっています。
賃金上昇率+1.7%以上の運用利回りをできる限りリスクを低く確保することを目的にしています。
現状では2001年から2018年の平均で2.87%の実質利回りを確保できており、健全な運用がされているといえます。
この積立金を約100年間で取り崩しながら運用を行うことを目標にしています。

・年金は2階建て制度
・世代間にて扶養を行い、インフレリスクを回避している
・将来のために積立金を運用している

積立金運用の方式

年金積立金は100年間という超長期で運用される資産です。
そこそこ良い成果を上げているGPIFはどのように資産運用を行っているのでしょうか。
その点についてこちらでご紹介していきます。
年金での資産運用は皆さんの資産形成にも参考になる運用の方法です。
頭の片隅に置いていただければ幸いです。

GPIFの行っている運用は2020年6月末現在、下記のような比率になっています。
・国内債券26.33%
・外国債券21.81%
・国内株式24.37%
・外国株式27.49%
以上

……ざっくり4等分に分けただけの運用に見えます。
こんな適当で大丈夫なの?と思われるかもしれませんが、全く問題ない状況です。
2001年から運用方針の変更など紆余曲折はあったものの、これでもかなり利益が出てしまっています。

この運用は為替の影響を受け、円資産が減る場合にも外貨資産が上がる等のバランスがとられるのでリスクヘッジが効いています。(その逆もしかり)
株がダメな時には安定収益の債券が利益を生み出すことでリスクのヘッジになっています。(その逆もしかり)
ある程度長期で見れば経済成長をする前提で、リスクをうまく管理した運用といえるでしょう。

2001年から累計すると約70兆円の収益が出ており、リーマンショックやコロナショックももろともせず増えている状況です。
もちろんコロナとリーマンの時には一時的に下落をしているのですが、元通りに戻り、さらに増えているのが現状です。
また、こちらも素晴らしい点なのですが、投資利益は安く買って高く売れたときに発生するキャピタルゲイン(差益)とインカムゲイン(配当・利子)に分けられます。
なんと配当収入であるインカムゲインで約38兆円の収益があり、安定的な利益形態をとれていることがわかります。

年金が行っている分散投資の仕組み

GPIFは年金運用を4等分に分け投資していることをお伝えしました。
これは長期分散投資という考え方に基づいて運用を行っているからです。
分散投資を行う意味合いとしてはどの投資商品が一番パフォーマンスを上げるのかを予想ができないからです。
例えば国内株式、外国株式、外国債券、国内債券の4資産を2001年から長期購入した場合に一番利益を上げたのは外国株式です。
しかし2008年に一番損失を上げたものも外国株式です。
1つの資産に入れることで利益も損益も振り幅が大きくなってしまいます。
しかし、いくつかの資産に分散してお金を置くことで収益が安定化します。
先ほどの4資産25%で分散投資を行った場合には運用益で1位になることはなかったものの、最下位になることもなく、安定して平均値を取り続けました。
その結果、2001年から2019年までの運用成果でマイナスになったのは4回しかない素晴らしい成果を上げることができました。

ちなみにこの運用の方法を1970年から行ったシミュレーションを取ると10年平均で1.85倍、一番ひどい時でも10年で1.07倍と資産を減らすことなく運用ができていた事実もわかります。
保守的な運用方法なことは間違いないものの10年で1.8倍に平均してなるのであれば悪くない運用方針に感じるのは私だけでしょうか。

FP視点的教訓

最近NISAやiDeCo等の制度普及によって資産形成を考えられる方が増えてきました。
FPとして多くの相談業務を受ける中で一般の方々の意見はこちらのような2択に大きく分かれているように感じます。

・貯金が何よりも安全なので、堅実にお金を積み立てるべき
・全米株式や世界株式等のインデックス投資でお金を入れ続けることが過去実績上よいので、資産形成はそれで充分

貯金は確かにブレ幅がないので安心感があるように感じる気持ちはわかります。
しかし、長期で見るとほぼ確実に起こっているインフレに備えることができませんし、お金の価値を下げる可能性が高いです。

逆に世界株式に一挙にお金を入れていらっしゃる方は合理的に見えますが、リスク要素をヘッジできているのでしょうか。
老後まで期間があまりない40代後半から50代の方でこういった思考の方は○○ショックの際に運用をストップさせずに安心して
投資し続けるメンタルがあるのでしょうか。
過去の運用成果をデータ上で見ると、株式運用一本が合理的な運用方法だったことは間違いありません。
しかし、実際に運用を行うのは人ですので、株価の下落時に耐えきれずに運用をやめる方が多いのも事実なのです。
資産が一気に増減しないためにも債券投資で心理的な安心材料を作りつつ、安定運用することは大切なのです。

そのため、実際に皆さんが心穏やかに安心して運用できる方針は国際分散投資(4資産分散等)に落ち着くことが多いです。
その4資産の中での比率をどうするかは、それぞれのご年齢や取れうるリスク許容度によるのではないでしょうか。
無責任なようではありますが、株や債券等の資産は平均すればそれなりの投資効果が出ると見込まれています。その上で心穏やかに生活できるリスク帯で運用を行うことが一番です。
あくまでお金は人生の中で手段にしかすぎません。目的は別にあるはずですから、手段に精神をすり減らす必要はないわけです。
皆さんの安心して行える運用の一つの形として4資産分散を使って長期投資をしてみてはいかがでしょうか。

以上、年金を教訓にしてFP視点で国債長期分散投資についてお送りいたしました!

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お金って大事だポン。 はじめての「おかねの、おはなし。」特別授業で学んだことを、 友達や家族に、おすそ分けする伝道師たぬき。