考え方

金融庁の「老後に2,000万円足りなくなる」発言って本当?可能性と対策を解説

金融庁が「老後に2,000万円足りなくなる」と発表したことで「自分の老後は年金がもらえなくなるの?」と不安になった人も多いでしょう。ですが、年金制度が破綻する確率は極めて低いと思われます。

今回の記事では、公的年金制度が破綻する可能性公的年金の現状や対策について解説していきます。ゆとりある老後の生活のために、今するべきことを考えていきましょう。

公的年金が破綻する確率は、極めて低い

公的年金制度は、現状では破綻する確率は極めて低いと思います。公的年金が破綻するためには以下の3つの条件が必要です。

  1. 現役世代が誰も年金を納めない
  2. 誰も税金を納めない
  3. 積立金が完全に枯渇する

これらすべてが100年以内に起きると公的年金は破綻しますが、それは非現実的です。

公的年金の財源について

公的年金には3つの財源があります。現役世代が負担する保険料、税金等、積立金の3つです。

公的年金は仕送り制度です。現役世代が今払った保険料はそのまま高齢者世帯にわたります。自分が将来受け取る年金を自分で積み立てるわけではありません。

2つ目の財源は税金です。消費税などの税金も年金へと姿を変えて高齢者へ支払われています。若い現役世代だけが負担しているわけではなく、国も負担をしています。

そして3つ目は積立金です。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が運用している積立金から高齢者へ支払いがされています。具体的な金額を言うと、平成29年度の公的年金制度全体での収入は52兆円です。

現状は保険料と税金等で公的年金はまかなわれています。積立金は人口がもっと減少してきたら取り崩されるため、今のところはまだ出番がありません。公的年金の前提を踏まえて年金が全くもらえなくなる条件について考察してみましょう。

①現役世代が誰も年金を納めない

国民年金には3種類の加入者がいます。

  1. 1号被保険者 自営業者 1,575万人
  2. 2号 会社員、公務員 4,264万人
  3. 3号 会社員、公務員の妻(専業主婦) 889万人

「年金の未納税者が40%に」とニュースで取り上げられたりしますが、これは自営業者に限った話。年金制度全体でみた未納税率は約2ぐらいです。

サラリーマンや公務員は給与天引きなので未納になり得ないのです。ほとんどの人は強制的に年金保険料を納めているので、結論として年金保険料を誰も納めないのはありえません

②誰も税金を納めない

国家国民が存在する以上、税金は必ず発生するでしょう。議員は税金を年金財源にあてることで有権者からの支持を得ようとします。社会保険を厚くすることで文句を言う高齢者はいません。

結論、税金を誰も納めなくなることは低いと思われます。いま現在も年間20兆円の税金徴収や年金の充当に成功しているので、税収がゼロになる可能性は低いでしょう。

③積立金が完全に枯渇

2018年時点での積立金は151兆円あります。2001年度以降、現在までに約57兆円の運用益をあげているのです。よくマスコミでは評価額がマイナスといった報道がありますが、トータルではかなり優秀で、堅実な運用が行われています。

この積立金は人口が多い今のうちに増やしておいて、現役世代が減っていくとともに取り崩しを行っていく予定です。取り崩しの段階になると年金財源の20%にあてられると言われていて、100年後には積立金がほぼなくなると計算されています。

積立金の残高水準は経済の好況不況にも左右されますが、とにかく急激な人口減少、少子高齢化に対応できるように計算されています。

結論として、積立金は規律ある運用でしっかり運用されています。仮に数十年以内に枯渇したとしても、そもそも公的年金の財源の約20%にすぎません。そこに加えて人口が今後永遠に減り続けることは考えにくいです。どこかで底を打ち、人口は増え始めます。その時には、保険料や税金だけで年金制度を維持できるので積立金の有無は問題にならないでしょう。

以上の理由から年金制度が破綻するのは非現実的ですし、年金が全くもらえなくなる可能性は著しく低いと思います。

所得代替率は減っていく

年金制度は現状破綻する可能性は低いとお話ししたところで、所得代替率についても知っておきましょう。年金がゼロになることはなさそうですが、「いくらもらえるか」は別のお話です。

自分が受け取れる年金額が、現役時の収入の何%をカバーしているかというのが所得代替率と言います。例えば平成26年の所得代替率は62.7%です。現役時に348,000円の収入があった人は年金で218,000万円もらえることになります。

国はこの所得代替率の考え方を重視しています。年金給付について0100かの話はしておらず、論点は割合補填になります。

国は物価上昇率や賃金上昇率、出生率などの指標をベースに今後どれくらいの所得代替率をキープできるかを検証しています。なので年金制度が破綻して1円ももらえなくなることはありません。ただ、所得代替率が減っていくことは分かっています。概ね40%~50%の所得代替率になっていくようです。

所得代替率は、現役時の収入の何%を年金でもらえるかの指標です。所得代替率は40%~50(妻子ありのモデルケースの1つ)ということを覚えておきましょう。

そもそも年金は現役時の収入を100%保障するものではありません。どんなに給与が高くてもどんなに給与が低くても制度計算上所得代替率が40%~50%である以上は、足りない分を自分で備えておくか、減ってしまう分生活水準を下げるか、どちらかあるいは両方の対応をとらざるをえません。

つまり年金問題を抱えていない人はいないのです。年金だけで老後をどうにかしようという発想がそもそもズレているのです。

金融機関等のセールストークに注意しましょう

「金融庁が老後に2,000万円足りなくなるよ」と発言したことで、保険や投信の、金融サービスでぼったくり商品が売り放題な状態です。

2人に1人がガンになる」といった都合のいい数字の抜き出しにだまされて、悪質な商品をつかまされないように気をつけてください。

まとめ

現状では年金制度が破綻する可能性は低いと考えられます。しかし、不足分を自分で備えておくことは必要です。そのためには自分で稼ぐ力を身につけましょう

収入の柱が増えて税金もお得で、老後も選択肢が出てきます。「働かないと」と思うのか、「働ける」と思うのか、自身の考え方の問題ですが、自分で選択できるのがいいと思います。

また積立NISAiDeCo、高配当ETF、不動産所得といった自分年金をつくっておきましょう。将来を見据えて情報を正しく判断して自分の身は自分で守ることが大切です。

  • 年金制度が破綻する条件は「現役世代が誰も年金を納めない」「誰も税金を納めない」「積立金が完全に枯渇する」の3つですが、どれも非現実的。
  • 年金制度が破綻する可能性は低いが、所得代替率は減っていく
  • 所得代替率とは現役時の収入の何%を年金でもらえるかの指標であり、概ね40%~50%になる可能性が高い
  • 年金は現役時の収入を100%保障するものではない
  • 「金融庁が老後に2,000万円足りなくなると言っている」というセールストークに注意
ABOUT ME
recoin-admin
お金って大事だポン。 はじめての「おかねの、おはなし。」特別授業で学んだことを、 友達や家族に、おすそ分けする伝道師たぬき。